優勝8回、総額1千万円超の賞金をゲットした起業家に「プレゼンの極意」を聞いてみた――Empath CSO 山崎はずむさん(後編)長谷川秀樹のIT酒場放浪記(1/4 ページ)

メルカリのCIOを務める長谷川秀樹氏が、志高きゲームチェンジャーと酒を酌み交わしながら語り合う本対談。なぜ、音声感情解析技術「Empath」は海外のピッチコンテストで注目されているのか、この仕事を始めるきっかけは何だったのかを同社共同創業者でCSOの山崎はずむさんに聞きました。

» 2019年02月27日 08時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

 元ハンズラボCEOで現在、メルカリのCIO(最高情報責任者)を務める長谷川秀樹氏が、志高きゲームチェンジャーと酒を酌み交わしながら語り合う本対談。今回のゲストは音声感情解析技術『Empath』を携えて数々の海外ピッチコンテストに出場、2018年は8回優勝、総額1千万円を超える賞金をゲットしたというEmpathの共同創業者・CSO(最高戦略責任者)の山崎はずむさんです。

 『Empath』の技術や用途にフォーカスした前編に続き、後編では海外でのスタートアップの状況やピッチコンテストで勝つ秘訣、大学で哲学の研究をしていたという山崎さんがなぜスタートアップの世界に飛び込んだのかなど、興味深い話題が盛りだくさんです。

Photo メルカリCIOの長谷川秀樹さん(画面=左)とEmpath CSOの山崎はずむさん(画面=右)
Photo 前編では、音声からその裏にある感情を導き出す音声感情解析技術「Empath」で、長谷川さんの感情が丸裸に……

独自の技術があれば海外のスタートアップにも投資する中東や欧州

Photo メルカリCIOの長谷川氏

長谷川: ピッチコンテストに出るならこの国がいい! みたいなのはあるんですか?

山崎: 賞金の額が大きいのはヨーロッパの小国と中東です。2019年に勝ったコンテストで一番、賞金の額が大きかったのは5万ユーロ、日本円で650万円(当時のレート)です。

長谷川: どこの国ですか?

山崎: ルクセンブルクです。ルクセンブルクはもともと、FinTechやSpaceTechが強いのですが、今はAIに注力したいという話になっていて。地場産業がなかなか作れないから、外から誘致しているんです。

長谷川: ピッチコンテストは民間が主催してるんですか?

山崎: ルクセンブルクの場合、イベントは半官半民でした。ルクセンブルク政府も関わっていますが、賞金を出す主体は民間企業という形です。

長谷川: 国が関わっていると、「国内のベンチャーに勝って欲しい」というバイアスがかかったりするのかなと思うんですけど、そうでもないんですか?

山崎: おっしゃる通り、一番やりたいのは国内のスタートアップ支援だと思いますが、海外のスタートアップを誘致し、法人を設立してもらうことで税収を獲得するという側面もありそうです。技術交流、優勝な人材の確保などももちろん狙っており、誘致の呼び水としてコンテストが機能しているのだと思います。

長谷川: 他の地域はどうですか?

山崎: 僕らが特に強い地域の1つは、アラブ首長国連邦(UAE)です。UAEの場合はテクノロジーを外から呼び込むほかないんですね。僕らは政府プロジェクトを一緒にやっていることもあって、UAE内での知名度が上がっているので、勝ちやすい状況です。あと、もう1つ、僕らが良くしてもらっているのがフランスですね。マクロン政権になってからスタートアップに対する支援がすごく手厚くなりました。

長谷川: フレンチテックって、CES(1月に米国ラスベガスで開催される電子機器の見本市)にもどんどん出てますね。

山崎: はい。実は僕らも「フレンチテックって言っていいよ」といわれて、フレンチテックを名乗ってます。フランスの状況は日本と少し似ていて、それなりに国内市場がありますけど、「これからは海外に出ないとヤバイよね」という危機感があって、外からいろいろなノウハウを得ようとしています。だから僕らも非常に入りやすく、仕事がしやすいんです。

 あとは北米のピッチコンテストでも受賞しています。僕らはGoogleのアクセラレータープログラムにも入れてもらっています。僕らにとっては、コールセンターの先の話として、スマートスピーカーとか音声アシスタント関連でどう影響力を持っていくのか――ということが非常に重要なので、ここに勝負を賭けています。

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