OracleとMicrosoftがクラウドで提携、両社の顧客にとってのメリットは?悲願のID統合管理を実現

これまでライバル同士だったOracleとMicrosoftがクラウドの相互接続で提携することを発表した。顧客と両社、どちらにとっても利益をもたらす提携だ。

2019年07月11日 10時05分 公開
[Chris KanaracusTechTarget]
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 OracleとMicrosoftが、クラウドサービスの相互接続で提携する。今回の提携はそれぞれのクラウドサービス間の相互運用性を高め、両社共通の顧客に新しい展開方法を提供する。クラウド分野における競争から意外な協力関係が実現する運びとなった。

 両社によると、Microsoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」のAI(人工知能)サービスと、Oracleの自立型データベース「Oracle Autonomous Database」を連携させたり、Azure内でOracleのERP(統合業務)アプリケーションを実行し、バックエンドのデータベースマシン「Oracle Exadata」と連携させたりできるようになるという。

 システムレイテンシを考えると、上記のような組み合わせは一見考えにくい気がするが、Oracleのクラウドサービス群「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の米バージニア州アッシュバーンのデータセンターと、Azureの米国東部リージョンを直接相互接続することでこれらを実現するという。今後、他のリージョンにも拡大する計画だ。

 クラウド相互運用性を高めるために、両クラウド共通のシングルサインオンを可能にする。早期プレビューで提供する機能として、OracleアプリケーションのID管理に「Azure Active Directory」も利用できるようにする。両社の共同サポートモデルも提供する予定だというが、詳細は不明だ。

 専門家は、今回の提携は両社とその顧客の両方に恩恵をもたらすと見ている。

 調査会社Constellation Researchのアナリスト、ホルガー・ミューラー氏は「これで企業の望みがかなう。Oracleのデータベースを効率的に運用でき、残りの処理をAzureで実行できる」と評価する。

 IDの統合管理は、これまでは顧客側が手動で実現していた。今後はOracleとMicrosoftが連携してサポートする、と調査会社Gartnerのアナリスト、エド・アンダーソン氏は説明する。今回発表した声明では、両社共通の顧客としてHalliburton Energy ServicesやGapなど数社がこの提携を歓迎するコメントを寄せている。

 今回の提携はOracleとMicrosoftが互いの技術と顧客ベースを補完し合うものになる。アンダーソン氏によると、Oracleのデータベース製品にとっては「Microsoft SQL Server」よりAmazon Web Services(AWS)の方が脅威だという。またOracleのERPアプリケーションはミッドエンドとハイエンドの市場が主な対象であるのに対し、「Microsoft Dynamics」は小規模な企業に向いている。

 「(Oracleにとっては)これもフットプリント拡大策の一つだろう。Microsoftは(ある分野においては)競争相手ではなく、多くの相乗効果が望める」(アンダーソン氏)

 今回の提携は、新しい技術的投資というより企業意思の表明の意味合いが強いようだ。OracleとMicrosoftが互いのデータセンターをどのようにして相互接続したのかはまだ明らかになっていないが、顧客のオンプレミス環境とクラウドをつなぐ高速接続手段として、Oracleには既に「FastConnect」があり、Microsoftにも「ExpressRoute」がある。「エンジニアリング作業の必要性はあまりなかったはずだ」とアンダーソン氏は語る。

 少なくとも当初の段階では、この提携は限定的だ。やろうと思えば、もっと密接な提携も可能だっただろう。例えば、OracleのExadataをAzureデータセンター内に直接組み込むこともできたはずだ。アンダーソン氏はそう指摘しながらも「それでもこの取り組みには意義がある」と付け加える。

両社の利害は一致するのか

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